平昌オリンピック雑感

2018/3/01

『平昌オリンピック雑感』

今回のオリンピックで、スポーツの持つすばらしさに我々は何度も感動を味わわせてもらった。

「ひたむき」「ひたすら」「ひた押し」など、日本語には「ひた」を冠した言葉がいくつもある。
漢字で引けば「直」。ひたむき(心を込めて一途に打ち込むさま)に集中して競技に挑む姿に感動した。

羽生結弦選手(東日本大震災の時は、練習中で、スケート靴のまま泣きながらはって逃げた。)
l ソチからの4年間は、故障に苦しみ抜いた。
でもあのまま順風満帆だったら、金メダルは取れていない。これは間違いなく言える。
l 氷に乗れない2か月間、座学の時間とした。オリンピックで演技するイメージを膨らまし、
リハビリ、治療方法などをむさぼるように学んだ。そしてずーっとイメージトレーニングをしていた。
l 「サルコーもトウループもアクセルも、何年間もずっと一緒に付き添ってくれたジャンプ。
感謝しながら跳んでいた。」
l 「ここまで来るのに大変だったので、色んな思いがこみ上げた。
右足に感謝しかない。今回は何より自分に勝つことが出来た。」
l 「この試合は勝たないと意味がないので、これからの人生で、ずっとつきまとう結果。
本当に大事に結果を取りにいった。」
l 金メダルで幸せを頂きました。この金メダルに恥じない人生を送りたい。

小平奈緒選手
l 「学びは、らせん階段。回って戻ってきた時にはもう一つ上に来ている。上に上がっていくだけ。」
これは大学時代に小平選手が書いたリポートだそうです。
l 「オリンピックは強い人が強いんだ。」  1000mで負けたことを受け入れ、
「1000mで3位以内というのは、500mで金メダルを獲るための方程式に乗っていると思うので、
挑戦したい。」という金メダルへの強い思いの言葉が飛び出した。
l 500mの優勝後のインタビューで自分自身を表現するとどうですか?との問いに、
しばらく考えて間をおいてから「求道者、情熱、真摯(ひたむきな姿)」と応えた。
l 「文化としてのスケートは何か?を求めてオランダに行った。
その2年間は自分自身とは何かを探すような時間だった。」
l 「与えられるものは有限。求められるものは無限。何でもやってみよう。」
l 「他者と比較するのではなく、自分と向き合うようになった。」
オランダ流のよいところを取り入れ、自分の限界を超える滑りに挑み続け、帰国した。
l 「完璧なスケートって一生出会えないと思う。毎日が新鮮。」
l 「究極の滑りを求めて、これから探して行くのが楽しみ。」と言う。
l 好きな言葉はガンジーの「永遠に生きるかのように学べ。明日に死ぬかのように生きろ。」
両選手共、すばらしい言葉の数々。奥深く感銘を受けながらメモさせて頂いた。

髙木美帆選手
髙木美帆選手の活躍も見事だった。同一大会で金・銀・銅。
1500m銀の悔しさから、団体パシュートで、金メダル。
「意識の高い選手が集まっているこのチーム、この大会で勝ちたいという気持ちだけで、走った。」
と思いを語った。

日本スケート連盟のスピード強化部長の湯田淳氏はソチでメダルゼロの惨敗からの
再建を託され、「1500mが22位、25位、31位、32位と散々だったが、
その4人で挑んだ団体パシュートは4位。個の力を伸ばせばメダルに届く。
個の力を伸ばし戦術や戦略を磨くには、散って練習するより集まった方がいい。」と。
ただこれまで日本スケート界の強化は実業団に頼っていて反対意見が多かったが、
「自分が関わる選手だけでなく、日本が金メダルを獲り続けていくことに意識を向けて欲しい。」と説得。

オランダからヘッドコーチを招き、科学的データに基づいた厳しい指導のもと、
365日の殆どの期間、共同生活を送ってきた。
美帆選手は「特別なことはしていないが、一緒に過ごすだけで、刺激し合える」という。
オリンピックに向けたチームのモットーは「覚悟を決める」。4人の思いが一つになり、金メダルとなった。

髙木菜那選手
最後に新種目のマススタートで、髙木菜那選手が作戦通りに最終周の一瞬のスキを突いた、
すばらしい判断力で金メダルを獲り、初代女王となった。
「みんなの力が一つになり、支えてくれた人や応援の力が自分の力に変わった。」

小平選手の相手選手を思いやり、また尊重した言動は日韓関係はもとより、
テレビを観ていた全世界の人々に好印象を与え、日本人のすばらしさをアピールしてくれた
ことを誇りに思い心から感謝したい。

今回のオリンピックは北朝鮮の件もあり、政治的に利用された政治色の強い大会の印象があった中で
参加された世界の選手たちの懸ける執念や試合後の爽やかな笑顔、涙など
本当に多くの感動を与えて頂いた。

特に小平選手の言動は現在の微妙な日韓関係の中で、韓国国民の日本人に対する意識を変えさせる
程の力があった。その貢献度は計り知れなく大きいと思う。
これが人間の文化の向上に寄与しているスポーツのすばらしさだ。