未知の世界を切り拓いていこう

2011/7/01

以前にも話したベンチマーキングとは、自分の目標とする選手の良いところから学んで、
その人とのギャップを埋めるよう努力して、早く追いついて、追い抜こう・・・
ということです。2番、3番でよければ、トップを走っている選手のマネをすることで、
比較的早く、ある程度のところまではいく。
しかし、1番の世界を走ろうと思ったら、マネするものはなく、
未知の世界を切り拓いていかなければならない。
非常に厳しい辛い世界ではあるが、そこに飛び込んでいく勇気が必要だ。

そのためには、○基礎体力の強化のためのトレーニングを重視 敏捷性、
ダッシュ・ストップの速さの追求頂点前、頂点打の追求
○新しい戦法の開発
○平常心、対応力、判断力、決断力、実行力の養成
○プレッシャーに耐える、精神力の強化
何日間も厳しい戦いを続けて、体力面のスタミナも
勿論大事だけど気持ちの上でのスタミナ切れが怖い
精神的な強いスタミナを持ち、集中力を持続させることが重要 etc

やらねばならないことは、いくらでもある。

私が、選手として、或いはナショナルチームの監督として活躍した時代は、
資金もなく、合宿時の練習場を確保するのにも、苦労を重ねなければならない
貧しい時代だった。それが逆にエネルギーになっていたのだろう。
現在はどんなものでも手に入れることが出来、やろうと思えばどのような環境にも
飛び込んでいくことができる豊かな時代になり、その中から強さを生み出すことは
難しいのかもしれない。
しかし、国内においても、中国やヨーロッパにしても、卓球の世界では、
その豊かさは同じ条件である。

自分のもって生まれた才能を、自分の力でどれだけ磨ききれるか、
チャレンジする心、やりがいとか充実感をどのように開発していくか・・・
ということに尽きると思う。
こんなに豊かな社会に生きているのだから、その豊かさを活用して、
その中から強くなる方法を、自分なりに見出して努力する選手になって欲しい。

明治大学の監事として、同じ役職を務めている熊崎勝彦氏
(プロ野球コミッショナー顧問)のご紹介で、世界オランダ大会の前に、
王貞治さんと水谷隼が対談をしてアドバイスを頂くということで、
日、時、場所なども決まり、楽しみにしていましたが、今回の東日本大震災の
影響で、延期になりました。

その王貞治氏の最近の雑誌に掲載されたメッセージです。
「僕はね、『この1球は2度とない』と思ってきたんですよ。
僕は1万回以上(1万1866回)打席に立ったのかな。1打席3、4球としても、
4万くらいの球と対して、それでも『あの1球を打ち損じた』と今でも思います。
打てなかった球を何とか打たなきゃ、そのためにどうしたら
いいかと思ってやっていると、ミスしていたものがミスしなくなるんです」

「打率も3割でいい、7回はミスしてもいいと考えると、ボールをバットの芯に
結びつける力が鈍くなるね。10回中10回、全部打つぞと臨んで、
打てなかった時にどうしてだと考えて練習して、やっと3割打てるんです。
努力したからって、必ずしもいい結果になるとは
限りません。だけど、やらないとダメなんだよね。」

「1試合に4打席立って、スイングは10回振れるかどうか。
その10回でミスしないためには、毎日100本も1,000本も素振りをしました。
『この1球』を逃さないためには、集中力が必要ですから、呼吸力を鍛えて、
一呼吸で30回もバットを振れるようになりました。
打てる人がうらやましくて、どこに長所があるのかと、まねをしてみることもありました。」

「やっぱり没入している世界というものがあります。
よく『ゾーンに入る』と言う、普通の感覚じゃなくなることが人間には
起こりえます。自分の持っているものが最大限に発揮される時で、
練習ならいちばん上達する時です。努力しないと、触れることはできない
世界だね。」
そこまで準備をして臨んでもスランプはある。その克服の道のりも、
普段と変わらない。「野球から離れて気持ちを切り替える人もいるけど、
それで次の日に打席に立っても、
僕の場合は不安が消えません。不安のままでは寝られないでしょう。だから練習。
バットを振るんです。まあ、気分転換が下手くそなんだね。」

「『打てた』『次は打てなかった』というのを経験していくと、
うまくいく確率を上げたいと思うようになる。そうやって人は
貪欲になるんじゃないかな。もっと打って、いい思いをしたいとなったら、
練習は苦じゃなくなります。
やっぱり、いいも悪いも経験しないと到達できない領域ってあると思うんです」

王貞治。ジャイアンツでの22年間で、本塁打王15回、三冠王2回、最優秀選手9回。
生涯で描いた868本の本塁打は世界最多。
結果で判断されるプロフェッショナルの世界において、その実績は比類がない。

人は成長するために生きている。困難は、さらなる人間的成長のために起こる現象で、
飛躍のチャンスである。そのためにも、大きな夢が必要なのだ・・・・・・と思う。