世界選手権雑感 そして人間成長の要
4月28日~5月5日、世界卓球選手権大会が開催され、
その感想を書きたかったので、今月の「語録」は5月6日とした。
世界卓球選手権大会も終わった。
多くの話題を提供して、連日超満員だったことは、
一卓球人として嬉しかった。しかし、結果は中国選手の独壇場となり、
日中の差が縮まらなかったことが残念に思う。
技術的には、台上処理以外は殆ど差が無いので、
何と言っても「心」と「体」の鍛え方が重要であると改めて確認できた。
医科学的に研究して、選手個人に対して必要な筋力強化のプログラムを、
早急に作る必要性を痛感した。
心理面での事例を取り上げるとすれば、
女子石川佳純 対帖雅娜の試合、ゲームカウント0-3 からの
4ゲーム目3-9から石川選手が諦めずに集中した粘り強さ。
一方、帖選手の楽勝ムードでの心のスキ。
卓球の心理面の恐ろしさを思い知らされた。
水谷・岸川のダブルス ガオ・ニンとヤン・ツーとの準々決勝、
審判判定後8-10からの執念による、逆転勝利、
翌日、準決勝2ゲーム目の7-3 リードから、強気な思い切りがなくなり、
逆転され、試合全体の流れが変わってしまった。
これらは、全て技術には関係ないところでの勝負である。
私はいつも
「リードしたら、リスクを冒しても、それまで以上に思い切れ。
相手も必ず開き直ってくる」
「負けている時は、開き直って思い切れ。
どんなことがあっても諦めるな」と
口グセのようにアドバイスしているが、これはビックな大会になればなる程、
重要なことである。この3つの事例、君たちも肝に銘じて、
今後の卓球人生に活かしてもらいたいと思う。
私は日本代表選手団の監督として、このような事例は数え切れない程、
体験したり、目撃したりしてきた。
もちろん、高度でハードな訓練を乗り越え、自信と誇りを持って、
高い目標に向かって意欲が充満している状態であるからこそ、
基本となる大事なアドバイスなのである。
今の日本は男女共、若い有望な選手がどんどん育っている。
近い将来、間違いなく打倒中国を果たし、世界に君臨できると思う。
先ずは、指導陣がこのことを確信し、ポテンシャルのある選手を、
いかに育てるか命懸けで研究し、アンテナを張り、選手と共に一丸と
ならなければならない。
こんな希望に満ちた、明るい時代は何十年ぶりだろう。
人が成長していくには
・ 熱中できるものを持つ
・ 持続する精神力を持つ
・ 絶対に諦めない
・ 新しい考え方を持つ
・ 自由な考え方を持つ
・ 自由闊達な発想を持つ
この6つが大事な要素である。
即ち、熱中し、持続し、さらに新しい考え方で活路を切り拓いていく姿勢が、
人間としての成長を促すのである。
強い選手は、過去の試合で何度も失敗を経験し、
今回の王皓のように、自分自身の弱点を克服し、
「絶対に世界チャンピオンになる」という「強い思い」で今大会に臨んできたと思う。
強さの本質は、負け試合における自分自身の問題を解決していく道程で
培われていくのである。
試合の経験とは、失敗の回数ではなく、リカバリーの回数である・・・
と知っておいて欲しい。
常に、物事を客観的に見る習慣をつけ、自分を外から見るようにする。
問題解決に積極的に取り組む姿勢、そして行動に移す、
そのことが価値ある自分を作り上げ、
世界で通用する自分を育てるのである。
自分を育てるコーチは、自分以外には存在しない。
指導者は、あくまでもアドバイザーである。
人間の能力なんて、大差はない。
どれだけ徹することが出来るかで、差が出るのである。
自分は何故卓球の道を選び、志してきたのか、原点に戻り
新たな一歩を踏み出していこう。