WBC - 世界一から得た教訓

2006/4/01

トリノオリンピックで世界一美しい舞いを見せてくれた
フィギュアスケートの荒川選手への興奮も冷めやらぬうちに
新たなスポーツのビックイベントWBC(ワールド・ベースボール・クラッシック)が開催され、
王ジャパンが“世界一”という勲章を手に入れる形で幕を閉じた。
「勝利の女神」の微笑みは、
王監督を始め選手全員が「運」と「ツキ」の持ち主であったから
手に入れる事が出来た、と思う。
その集団が、熱意と執念を込めて戦ったからこその“世界一”であった。
この大会で、誰よりも輝いていたのは“イチロー選手”だった。
気難しいイメージが先行し、最初はチームになじめるのかな、と思っていたが、
そんな心配は吹き飛ばしてくれた。
球場に誰よりも早く出向き、入念に体を手入れして張り切って練習した。
「イチローの背中が大きく見えた。」
だから「大リーガーの前でも臆することなくプレーすることが出来た」と
日本の選手達は口を揃えて言った。
日米戦のタッチアップ問題などが起きたアメリカ戦から一夜明けた練習日でのイチローは
まさにチームを牽引するリーダーの姿であった。
「寡黙な」イメージの強かった天才イチローだが、その日は積極的に選手に話しかけ、
明るく笑顔で動き回っていたそうだ。
天才イチローのその姿に“悔しさは勝って晴らすしかない”という事を
日本の選手達は改めて強く感じたことだろう。
大リーガー入りする前、オリックス時代にイチローは
「チームの中に一人でも“優勝は無理だろう”とか“もうダメだ”と思う人がいると
そのチームは優勝することが出来ない」と語っていたことがある。
韓国に2敗、「自分の野球人生で最も屈辱の日」から立ち直り
「野球人生で最高の日」を迎え、日の丸を手に王監督と抱き合って喜んだイチロー。
準決勝から3番に入り、打って走ってのイチローらしさが随所に出ていた。
決勝も9回の貴重な適時打を打って、3得点。
「シーズンのことは頭になかった。今日でつぶれてもいい。
何があってもやってやると思った。」
と彼は熱く語った。
韓国に向けての過剰な発言も、
世界と戦う厳しさを誰よりもわかっていたイチローならではの熱い思いの現れであった。
「メジャーに来てわかったのは、常に戦う姿勢でないと、なめられるということ。
日本人は特に闘争心が弱い。国際試合で戦う時の感情の出し方を見せたかった」
イチローは親しい記者にこう漏らしていたという。
決勝前夜。
「出なかったヤツらを見返してやろうぜ!」
王監督主催で行われたシーフードレストランでの決起集会で、
イチローの雄叫びに他のナインも声を揃えて「オー!」と応えた、という話を聞いて
正直私も驚いた。
王監督の再三の勧誘にも応じなかった松井や井口とは違い、
こんなにも燃える男だったとは想像出来なかった。
チームを一丸とさせ、これまで個人主義に徹する“孤高の選手”というイメージだった
イチローが今大会ではナインを引っ張り、立派なチームリーダーとして活躍した。
いかなる条件が整っていても、自分自身が本気でなければ成功することはない。
チャレンジしない、自ら動こうとしない人には苦しさも壁もないが、
その人達には成功もない。
どんなテクニックも知識も、本気にはかなわない。
本気でことに当れば、必ず道は拓けていくものだ、
ということを今回のWBCで教えて貰った。