逆転勝ち/5つの反省とイメージ

2002/5/01

これは、荻村伊智郎氏が以前、『日本経済新聞』に書いた記事の抜粋である。
学ぶべき点が多いと思う。
「私は特に逆転勝ちの多い選手だった。世界選手権大会のシングルスだけでもマッチポイントを
相手に握られ、しかも15-20の劣勢からの7点連取逆転が四回ある。
その中で最も印象に残るのは、24回ストックホルム大会でのボグリンチ(ユーゴ)戦で、先に2ゲーム取られ、第3ゲームは15-20から逆転。第4ゲームをとって2-2のタイとはしたものの、
再び第5ゲームで15-20とマッチポイントを奪われた試合である。しかもサービス順は相手に回った。
私をねめつけ、やおらバックハンドサービスの構えに入ろうとしていた。
 このとき私は自分が負けるということは全く考えていなかったが、狙った球がどうもうまく
決まらないという焦燥感は味わっていた。
はっ、と私が我に返ったのは、ちょうどそのとき、三十人ぐらいのカメラマンや記者たちがカメラを
構えて私のコートをとり囲んだからである。
他のコートの試合はすべて中断され、“世界チャンピオン敗れる”の一瞬を見守ろうとしていた。
私は「あぁ、負けるんだ」と、事情がわかった気がした。
「そうか、どうせ負けるなら、荻村らしくやれ」と思った。
荻村らしい試合とは何か、自分でもわからない。
 だが、そう思った瞬間に気がス―ッと落ち着き、会場が急に狭くなり、
自分が急に巨大になった気がした。会場を一つかみでつかめそうな気がしたのである。
そして、私はラリーの中でのスマッシュコースをバッククロス一本にしぼり、7点連取して
逆転した。
うち1点は相手のスマッシュミスに助けられたが、あとの6点は全部スマッシュで、
会場は大いに湧いた。
そして、私は準決勝、決勝へと進むことができた。
逆転勝ちには反省がつきものである。
「そんなに大量に得点できるのになぜリードされたのか」。
反省があるから高い勝率が挙げられるのだが、人間である以上、好不調の波もあり、
苦手もある。あるときは窮地に立つのも止むを得ない。
しかし、そこから脱するから「あいつは強い」という神話も生まれる。
私の経験からみると、逆転勝ちにはいくつかの共通する要点がある。
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一つは、悪い状況を素直に認めること。負けを前にして、決まらないショットを
「あれが入ればなあ」とボヤきながら繰り返さないこと。
二つは、気落ちしないこと。気落ちすると凡矢がでて敗勢が決定的になる。
三つは、ムリをしないこと。ムリをすると必ず狙いすぎの致命的なミスが出る。
四つは、的を絞ること。奇手妙手がそう沢山あるわけではない。
五つは、次の1ポイントだけを考えること。相手は5点のリードを考え、
自分は1点だけを考えたとき、両者の雰囲気が一変する。」
今月は
 いよいよリーグ戦だ。
先日、当社のミーティングで、七田眞先生のお話の中にも日本航空学園の選手が、
「巨人になったイメージ」を持って勝利をものにした…という話があったが、
奇しくも荻村氏の言葉にも「荻村らしくやろう」…と思った瞬間に
「会場が急に狭くなり、自分が急に巨大になった気がした。」といっている。
この記事を読み返していて私自身もこの共通点に驚いている。
私の非常に多くの量のメモ帳(参考資料)の中から、偶然、この記事が目にとまったことも
何かの必然性を感じて、「今月の言葉」としたのである。
明るく自信に満ちたイメージを膨らませて、全員が自分の役割を全うして、
春季リーグを勝利しよう。